生活と芸術
久しぶりに上野へ。
東京都美術館で開催されている「生活と芸術 アーツ&クラフツ展」を見てきました。
こんな仕事をしていながら、いまひとつ漠然と捉えていたこのデザイン運動。(まずいですね〜)
最近よく感じるのですが、今のこの仕事以外に何も出来ない自分にとって、家具作り=人生みたいになってきているのです。世の中に対しても、家具を作って売る(買っていただく)、という色眼鏡を通してしか物事を捉えられなくなってきております。良くも悪しくも。
そんな最近だからこそ、この展示会を見た意味は随分と大きいものになりそうです。
以下本展覧会HPより引用
19世紀後半にイギリスで興ったデザイン運動「アーツ&クラフツ」の広がりを、ウィリアム・モリスを中心とするイギリス、ウィーン工房がひときわ輝いたヨーロッパ、そして民芸運動が花開いた日本での美しい作品からたどります。
手仕事の良さを見直し、自然や伝統から美を再発見し、シンプルなライフスタイルを提案する。アーツ&クラフツが生み出した精神は、現代の生活に影響を与えながら、今なお遠い理想のようにも映ります。モリスや仲間たちが作り出した家具や壁紙、当時の最先端都市ウィーンの前衛的な家具やグラフィック、「用の美」を見いだした民芸の美意識を味わいながら、生活のなかの芸術について思いをはせる機会となるでしょう。
100年以上も前のイギリスで、工業化に伴う大量生産されたモノへの反動として、日常生活に芸術を持ち込もうと、手仕事に帰ることを提唱した人たち。
その生産活動を、あらためて工業として経済的に成り立たせ、富裕層のみならず一般大衆の日常向け製品を作ろうとするドイツ工作連盟。
それらの波は日本の民芸運動へとなるのです。
以下本展覧会図録より引用
日本における「民芸」という新しい概念は、ヨーロッパの場合と同様、社会の急激な変化の最中に、安定性と啓発のよりどころを過去に求め始めた世情から出現したものである。
(引用おわり)
「安定性とよりどころを求めて過去へ」 なんだかドキドキする言葉です。
とにかく素晴らしかったです。
手仕事で良いモノをひとつひとつ作ること、それを商売として成立させること。
良いデザイン、良い素材、良い製法でより効率的に作って、より安価に供給すること。
一般のお客様を対象とした注文家具屋として、毎日毎日直面する問題です。
普遍的(に近い)具体的なビジネスモデルが無い(と思ってます)自分たちの工房なので、どうして良いのか分からずに、毎日が暗くて冷たい海の中をたった二人だけで泳いでいるような気分になることもあります。もちろん楽しい出来事もたくさんありますが。
そんな我々に、時代を超えたメッセージを受け取れた気がする一日でした。
これからしばらくは、帰り道の上野の空の夕焼けに、思いをはせる日が続きそうで・・・。
ああ、仕事します。がんばりまっす。
「あ」
左にうつる昭和な人が 「さ」